憂鬱な自分を変えたい人におすすめの一冊「嫌われる勇気」
はじめに
「嫌われる勇気」は著者の岸見一郎氏がアドラー心理学をわかりやすく解説した本です。
アドラー心理学は、今の自分が不幸で幸せになりたいと願っている人におすすめの心理学です。
私の場合はこの本を読むことで自分の精神面に以下のような変化がありました。
①過去や未来に振り回されなくなる。
②他人(家族や友達、恋人や上司)に振り回されなくなる。
③人間関係の悩みがなくなる
④自分に自信が持てる。
決して何か特別な考え方や教えがあるわけではありません。この本はあくまで基本的な考え方を提供しているだけです。実際に身に着けるには勇気をもった行動と継続する意思が必要というものです。
本書にはアドラー心理学に関するたくさんの内容が書いてありますが、自分がうつ状態から立ち直った際に役に立った考え方をいくつか紹介しようと思います。少しでも同じような悩みを持っている人の参考になればいいと思います。
嫌われる勇気 自己啓発の源流「アドラー」の教え
心身は今の目的に沿って行動している
人生においては原因論ではなく目的論が成り立ちます。目的論とは「現在の自分の判断は過去に起きた原因ではなく、現在の自分の目的によって下された」とする考え方のことです。
例えば「いじめられたから引きこもる。」という事例について考えてみます。
この「いじめられた。」だから「引きこもる。」という考え方は原因論と呼ばれます。原因論は科学の世界では必須な考えです。しかし、原因論が複雑な人生に対しても成り立つならば、いじめにあったことがある人は例外なく今も全員引きこもっていることになります。
この具体例を目的論に当てはめると以下のようになります。
「引きこもる」という現在の判断は、「いじめられた」という原因ではなく、現在の自分が得られる何かしらの目的から下した判断ということになります。
「いじめられない」だけなら、選択肢は複数あるはずですが、その中で「引きこもる」を選んだのには理由があるのです。
たとえば「親に心配されたい」などの目的が先にあるのです。いじめられたという過去の事実は否定するわけでもなく、肯定するわけでもなく、今の自分の判断とは無関係ということです。
もし自分の行動が目的論に沿っていることに気づけば本来とるべき行動がわかります。
変えることのできない過去や未来、外見、家族事情、他人の意見などに気をとらわれずに自分が本当に求めていることを知ることができます。たとえば、「いじめられた」事実は変えられませんが、「親に心配されて自分はどうしたいのか」を考えることができます。これが自分を変えるための第一段階になります。
いきなり難しい考え方で何度も読んで理解する必要があります。
実際理解すると至極当然のことで、これまで原因論のほうばかりを教えられてきたから理解が難しいだけです。今の自分があるのは過去があるからだし、過去の事実を否定しているわけでもありません。しかし、今の自分の行動は現在の自分の目的があるからです。
人生の軸を他人から自分にする。
他人軸で生きているということについて考えてみます。
他人から認めてもらえたり、自分の望むことを他人がしてくれるとうれしいと感じます。
もし、他人から認められることで価値を感じるのであれば、それは他人の決断で自分の感情が左右されているといえます。
しかし、他人を変えることはできません。
変わるかどうかはその人次第です。例えばあなたが友達にアニメを勧めたとして、その相手がそのアニメを見る確率を考えてみてください。どんなに上手なプレゼンをしたところで100%になることはないはずです。逆に相手がどんなに素晴らしいプレゼンでアニメをおすすめしてきても100%見ることはないはずです。そのアニメを見るかどうかはあなた次第なはずです。
変えられない他人軸で生きるということは、自分の精神状態を他人にゆだねていることになります。
そして、他人軸で生きる人生を断ち切るには課題の分離という考え方が重要になります。
課題の分離とは「自分の課題と他人の課題を分離して自分の課題にのみに取り組んでいく」という考えです。先ほどのアニメの例で言えば、他人にどれだけ魅力的な勧め方をされても見るか見ないかを判断するのはあなた次第です。他人の課題に踏み込んだところで相手を100%変えることはできません。逆に勧める側ならばどれだけ上手に魅力を伝えるかどうかが自分の課題です。ここには取り組むべき課題があります。
自分の頑張れる幅は全体を100%として50%までです。自分が頑張らなければ望まない結果になる確率は高くなります。しかし、頑張ったところで望む結果を得られる確率は50%にしかなりません。頑張ったところでそれが認められるかどうかはコイントスで表が出る確率と同じなのです。
課題の分離ができれば他人のせいにすることがなくなります。
他人は変わらないと知り、人間関係はすべて自分次第となります。できることは自分の全力を尽くすだけで後はどうなっても関係がない。
少し冷たい考え方に聞こえますが、人間関係で悩んでいる人、憂鬱な思いをしている人にとって「望む結果が得られるかどうかお祈りするのか」、「やれることだけをやってあらゆる結果を気にせず受け容れるか。」は大きな違いになります。
ありのままの自分を受け入れる
ありのままの自分を受け容れることを自己受容といいます。
自己受容は自己肯定やポジティブとは少し意味合いが違います。自己肯定やポジティブは自分にできないことまでできると捉えることであり、自己受容とはできない自分とできる自分を受け入れることです。
今の自分が40%だった場合、これを今100%だと言い張るのがポジティブな肯定であり、0%だと思っていしまうのが自己否定です。そうではなく40%だと認識するのが自己受容であり、自分にできることとできないことを見極めるのです。ありのままの自分を受け入れ、認めるということです。
前の節で人間関係で自分が取り組めるのは50%までといいましたが、これも同じことです。相手に響かせるようなプレゼンが必要だとして、響かせられる確率が50%だとして、自分は一体何%でしょうか。まったく人前で発表したことのないような人は数%程度ではないでしょうか。そこから、その人がプレゼンの構成やスライドの作り方を習得し、話し方や抑揚、外見や身振り手振りを習得し、入念な準備練習を重ねて挑めば相手の心に響かせられる確率は高まるとは思わないでしょうか。
あらゆることに対して自己受容できるようになれば、自分の現在位置を知り、それを最大化することに集中して取り組めるようになります。
今を真剣に生きるだけ
上記3節から得たことをまとめると、以下の3行になります。
自分の本心を知る。
他人や過去、未来、その他事実は変わらない。
自分の現在位置を知る。
他人が変わらないと知り、自分の現在位置が理想から遠いと認めたところで、多くの人に指示される特別なスターになりたいという気持ちはどう解釈すればいいのでしょうか。
その答えは「今ここを真剣に生きる」ことです。
過去や未来ではなく、今ここを充実させることです。計画通りな人生を歩むことはそもそも不可能なのであって過去や未来に目を向けても意味がないと知ることです。視野を現在の一点に集中し今ここを真剣に生きるべきなのです。
イチローも世界記録を達成するほどの日本一の野球選手になりたかったわけではなく、その時々の目標があり今ここを真剣に生きてきたのです。最初は野球がうまくなりたい、チームに貢献したい、自分の記録を一つ伸ばしたいなどそういった具合です。
こう考えれば、目標や計画という言葉の意味も変わってきます。
目標とは将来達成すべきものではなく、今ここを真剣に生きるための指標です。真剣に生きる気持ちが強ければ理想の自分に近づくわけであるから、結果としてもしかしたら偉人に近づいているかもしれないというだけです。
例えば歌手になりたい人がやるべきことは、将来の達成した自分を妄想することではありません。現実との乖離を嘆くことでもありません。他人との才能を比べることでもありません。
自分の努力のベクトルを歌手になるために全振りして、今の自分にできる時間で今の自分にできること(勉強や練習、演奏や応募など)をやるだけです。それを続けていればいつか歌手になれるかもしれないしなれないかもしれないし、全く違う目標に変わっているかもしれない。しかし、そんなことはどうでも良い。今の自分にできることは今日限られた時間でこの目の前の課題に全力で取り組むことだ。
変えられないものを嘆いてもしょうがない。自分の現在位置を嘆いてもしょうがない。今の自分にできるのは唯一変えられる自分を目標に向かってできる範囲で奮い立たせるだけです。結局毎日取り組むしかないのだから。
これを身に着けるとどうなるか。今を全力で楽しんで生きることができるようになります。
未来、過去、他人、事実などは変わらない。現在の自分のみが変わる。
大事なのはこれらを認めたうえで自分の全力を尽くすことです。
これは本当に何にでも言えることです。例えばコロナ禍は変えられないものだし、新入社員として入ったばかりの会社の制度なんかも変えられないものです。日々の生活を楽しむこと、自分の時間の使い方、何かをやめ、何かを始める選択は変えることができるのです。
最後に
この本にも書いてありますが、自分が考え方を変えようと思ったのなら時間がかかります。
自分も2年間この考え方を自分なりに解釈し続け、改善し続けて、すこしずつ体にこの考えをなじませてきました。
自分は確実にこの考え方に救われたし、自分のような悩みを持っている人がいるなら、ぜひこの簡単ではない自分を変える考え方を実践してほしいと思います。
今回は自分が特にためになったことを書きましたが、他にも参考になった考え方がたくさん書いてあります。例えば、劣等感や優越感、人生のタスク、恋愛など。ぜひ読んでみてください。
嫌われる勇気 自己啓発の源流「アドラー」の教え